ホーチミンで印象に残った熱帯の植物
皆様こんにちは。前回はホーチミンを訪れた時に見かけた街なかの植え込みについてお届けいたしましたが、今回は日本ではなかなか見られない、印象に残った熱帯の植物を絞って紹介したいと思います。
まずはこちらの画像をご覧ください。

この木はアジア最古と言われるサイゴン動植物園を散策していた時に、突如として現れ、そのまさに異形な姿に度肝を抜かれました。非常に樹高の高い木で空に近い所に葉を茂らせており、地上に近い所、ちょうど私の頭上のあたりに太い幹から直接奇怪な花をつけていました。なんとも形容のしがたいインパクトのある花形、人の常識をあざ笑うかのような花のつけかたに名前を知りたいと思ったのですが、プレートも説明の看板等もなにも無く、ずっと気になっていたところ、帰国してから調べていましたらわかりました。
和名「ホウガンノキ」。砲丸投げのあの砲丸です。この異様な花の後にまさに砲丸のような大きさの木質化した果皮をもつ実をつけるところから名付けられたそうです。
実はついていなかったので残念ながら画像は無いのですが、是非ネットで検索してご覧ください。実のついた様子もかなり衝撃的です。英語では大砲の玉にみたてて、「Cannonball tree」とよばれるそうです。学名はCouroupita guianensis。なんと読むのでしょうか...コウロウピタ・ギアネンシス? ギアネンシスからわかるように南米ガイアナの原産だそうで、世界各地の植物園や熱帯では街路や庭園、寺院などに植えられているそうです。今回の旅ではこちらの場所以外では、タオディエンと呼ばれる地区にあったカフェの植え込みで見かけた程度で、それほどあちこちに植えられてはいなかったように思います。
なぜこのような変わった花のつけ方をするのでしょうか。ものすごく樹高の高い木ですから、樹冠に花をつけるとすると、そのあたりは花粉を媒介してくれる昆虫や小動物が非常に少ないはずです。もっと媒介者がたくさんいる方へ花をつけるように進化した結果がこのような姿になったのでしょうか。どなたかこの植物について詳しい方がいらっしゃったら是非教えていただけたら幸いです。
このような仕事をしていますと、つい植物を知っていると勘違いをしてしまいますが、世の中には当たり前に、知らない植物が沢山あるのだなと、改めて思いました。

次に紹介するのは、これは当店でもごくたまに扱うことのある植物、インドシクンシです。

印度使君子と書きます。学名はCombretum indicum(コンブレタム・インディカム)。 以前はQuisqualis・indica(キスクアリス・インディカ)と呼ばれました。東南アジアからインド南部あたりが原産です。使君子とはこの植物の果実から作られた、回虫駆除や胃腸薬などに利用された生薬の名前だそうで「天子からつかわされた使者のように尊い薬」という意味だとか。とてもありがたい和名ですね。英語ではRangoon creeperと呼ばれます。ミャンマー最大の都市ヤンゴンの旧称、ラングーンのツル植物という意味ですが、それだけかの地では印象的な植物だったのでしょう。この植物はホーチミンの街中の至る所に植えられておりました。背の低いものはまるでツツジの植え込みのように、ツルが伸びたものは...ちょっと例えが思いつきませんが、とにかく非常にありふれた花という印象を受けました。花の色が咲き進むと変わり、グラデーションになって大変美しいものです。日本では沖縄あたりでは街路に植えられているそうですが、本州では耐寒性の問題で鉢でしか育てられません。かなり大きく育つので本当は地植えしてパーゴラなどに絡ませられたら素敵なのですが。花にはパウダリーな甘い香りがあり、GUCCIのフレグランス、BLOOMにも採用されています。
そういえば今年の夏はこの植物の入荷はなかったのですが、来年は仕入れられたらいいなと、彼の地を懐かしみながら思います。