ひっそりと師走に
2025年も残すところ僅かとなりました。昔に比べれば年末年始も普段の日々とあまり変わらなくなって来ましたが、それでもカレンダーに目をやる度になんとなく気忙しい気持ちになります。
皆様はお元気でお過ごしでしょうか。
オザキフラワーパークの店頭はシクラメンにポインセチアと冬の鉢花が所狭しと並び、苗ものではハボタン、プリムラ、ストックがハイシーズン。パンジー、ビオラもまだまだ頑張っています。クリスマスローズの開花株も並び始めました。この光景を目にすると、毎年のことながら、ああ、年末だなと思うのであります。ただ、売り場全体の色調はどうしても赤~ピンク~紫の間のグラデーションがメインになり、華やかではあるのですが、少々重たい感じがすることは否めません。そんな中ひっそりと、爽やかでちょっと神秘的な色の花をつけている小さな花がありました。
ラケナリア・ヴィリディフローラです。

Lachenalia viridiflora
ラケナリアは南アフリカに多くの種が分布する球根植物で、スイスの植物学者のラシュナル氏にちなんで命名された学名だそうです。こちらの種ヴィリディフローラは「緑色の花をつける」といった意味の種小名でその名の通り神秘的な青緑色の花を咲かせます。ラテン語で「緑の」を意味する「viridis」と「花」を意味する「flora」に由来し、けっこう様々な植物で見かける学名です。小学校の時に使った絵具の中にもヴィリジャン(viridian)という青みがかった緑色がありましたよね?子供心に変な名前だなと思っていましたが...
もし、ある知らない植物の学名を見た時に、その姿が全く想像できなくても「viridiflora」という名前がついていたら、少なくとも花色は緑なんだなということがわかる訳です。
ちなみに話はそれますが、植物の色が想像できる学名は他にも沢山ありますので一例をご紹介しましょう。
「alba」アルバ 白い
「nivea」ニベア 雪のように白い
「nigra」ニグラ 黒色の
「aurea」オーレア 黄金色の
「lutea」ルテア 黄色の
「purpurea」プルプレア 紫色の
「atrosanguinea」アトロサンギネア 暗い血のような、暗赤色の
「rubra」ルブラ 赤い
学名はラテン語文法に従うので、頭の属名が男性名詞、女性名詞、中性名詞のどれに当てはまるのかによって上記の単語の末尾は変化しますが、皆様もなんとなくどこかでこれらの語を耳にされたこともあるのではないでしょうか?実物を見なくてもある程度はその植物の色彩が思い浮かぶので、覚えておかれると便利です。
さて、本題のラケナリアにもどりまして、私は以前こちらのヴィリディフローラを育ててみたことがあります。どこで購入したのかはもう忘れましたが、まるでゼリービーンズのような不思議な花に惹かれたんだと思います。都内の軒のあるベランダでしたが、比較的耐寒性があり乾燥にも強くとても育てやすいものでした。花後に葉が大きくなり春の終わりごろに枯れて休眠しました。それっきりその存在を忘れてしまったのですが、その年の秋の初め頃、ベランダを整理していましたらつぶつぶとなにやら芽のようなものが沢山出ている小さな鉢が出てきました。よく見ると鉢一杯に球根が分球して、まるで仏様の螺髪のようになっておりそこから芽が出ているのでした。酷暑の間水もやらずに完全に放置していたにも関わらず、秋の訪れを察知してラケナリアが目覚め始めていたのです。そして初冬になり花が咲いたのですが、購入したときは一つか二つしかなかったのが、株一杯に花盛りとなりその旺盛な生命力に感動いたしました。その後は何年か毎年のように花を咲かせていましたが、引っ越しなどにともなっていつか無くなってしまいました。
