ラン生産者直販イベントレポート&インタビュー

2021年2月13日、14日にランの生産者による直販イベントを開催しました。ご出展いただいたのは、奥田園芸・大場グローバルプランツ・松本洋ラン園・ナーセリーイデ・やまはる園芸の皆さまです(敬称略)。イベントの様子をお届けするとともに、生産者の方々に展示の感想やランの奥深さについてお話を伺いました。

奥深いランの世界を気軽に体験

オザキフラワーパーク(以下、オザキ)は、生産者さんとお客さまとを結ぶ架け橋となるべく、数年前よりランに特化した販売イベントを実施してきました。

イベントでは、胡蝶蘭やカトレアなどのなじみ深い品種のみならず、一見ランには見えないような珍しいものも多数紹介しています。実は、ランは原種だけでも3万種以上も存在すると言われている多様性に富んだ植物。被子植物としては最も種類が多い上に、交配種も含めるとそのバリエーションは膨大です。その多様さが、生産者さんや愛好家の方々を惹きつける大きな要因のひとつとなっています。

本イベントではランの世界の一端をご体験いただけるよう、それぞれ異なる種類を扱う生産者さんにお声がけをし、初心者からマニアの方々までご満足いただける展示を目指しました。

当日は、愛好家の方々や、たまたま当店で買い物をしていたお客さまでブースは大賑わい。コロナ禍でイベントの開催数も減っていたからか、愛好家の皆さまは今回の販売会を楽しみにしてくださっていたようです。

たまたま訪れたお客さまから特に反響があったのは、壁に吊して観賞する種類のランです。「ランと言えば花」というイメージを持っていた方にとっては、根っこを観賞して楽しむタイプはインパクトがあったかもしれません。珍しいランに驚きつつも、選び方や育て方を熱心に質問される姿が印象的でした。

2日間にわたるイベントは大盛況のうちに終幕。ここからは、ご出展いただいた5名の生産者さんへのインタビューをお届けします。

商売敵なのに仲良し? ラン生産者ネットワークの秘密

──それぞれに簡単な自己紹介をお願いします。

奥田:神奈川県平塚市の奥田園芸です。開業から30年以上にわたってランの生産、販売を手掛けています。オザキさんとの出会いは、10年ほど前にお声がけいただき出展した洋ラン展の時にさかのぼります。

井出:静岡県富士市のナーセリー イデです。奥田さんにお声がけいただき、今回でもう何度目かの参加になります。

松本:八王子市の松本洋ラン園です。僕たちは「洋蘭組合」という組織に所属していて、普段からよく交流している間柄です。だいたい1〜2ヵ月に一回は会っているんじゃないでしょうか。

大場:静岡県長泉町の大場グローバルプランツです。松本くんと僕はオザキさんでの初めてのラン販売会から参加させてもらっているので、もう5年ほどになりますね。

河村:静岡県浜松市のやまはる園芸です。皆さんに誘っていただき、今回初めて参加しました。ラン生産者はお互いに持っていない品種を融通しあったり、他の人が出るイベントで自分の品種を委託販売してもらったりと、お互いによく協力しあっています。商売敵のはずなのに仲が良いんです(笑)

大場:ランはとても種類が多いので、ひとつの業者ですべてを賄うことは到底できません。それぞれに得意な品種があるので、お互いに補い合うことで、より柔軟にお客さまのニーズに応えていけるんです。

奥田園芸・奥田さん

ナーセリー イデ・井出さん

松本洋ラン園・松本さん

大場グローバルプランツ・大場さん

やまはる園芸・河村さん

 

マニアックな品種のファンが増加中?

──イベントの手応えはいかがでしたか。

奥田:普段のイベントだと、お客さんのほとんどが蘭友会に入っている趣味家の方々なんです。でも、オザキさんのような総合店で販売すると、ラン愛好家に限らず、より多くの植物好きの方が興味を持ってくださるので新鮮ですね。

河村:「待ってました!」という感じのお客さんもいましたよ。オザキさんでの販売会をきっかけにランの世界に入門して、育て方のコツがだんだんわかってきたから、イベントを楽しみにしていたんだそうです。

松本:オザキさんのお客さんは、ラン初心者だったとしても、栽培までやってみたいという意欲のある方が多いですね。増やし方について熱心に質問してくださる方もいました。

大場:東京ドームなど大きい会場での販売会を訪れるお客さんは、飾って楽しむところまでという方が多いですね。目的が違うんだと思います。

奥田:オザキさんのお客さんの傾向で面白かったのは、オブジェやインテリアとして植物を楽しむ方がいることでしょうか。育てるのが好きとか、お花を楽しみたいというよりも、変わった植物を愛でたいという気質があるように感じました。

井出:ランのマニアが買うようなマニアックな品種を「根っこがむき出しでかっこいい」みたいな感じでさくっと買われますよね。鉢で売っていた品種に対して「これは板に付けて飾れますか」と質問されたり、楽しみ方の広がりを感じられて面白かったです。

大場:インテリアとして楽しまれる方はここ2、3年で増えてきた印象があります。マニアックなものの方が売れることもありますし、こちらも需要にしっかり応えるために、日々勉強ですね。

ランの魅力は底知れない

──皆さまは世界中で栽培されているランを扱われていますが、現地を視察することはあるのでしょうか。

奥田:東南アジアなど、生産者の多い地域にルートを持っている人は多いですが、現地を何度も訪れる人は珍しいかもしれません。僕は何度もタイやミャンマーを訪れ、自生地にも足を運んでいます。ランを栽培する上でも、自生地の環境を自分の肌で感じておくのは大切です。

井出:たしかに、湿度や温度については計測した数値よりも自分の肌感覚を信用しています。生産者だけでなく、自分で温室を持っているようなベテランの趣味家さんたちも、湿度や温度はだいたいわかると言いますね。

──これだけ種類が多岐にわたると、生育環境もさまざまなんですね。

河村:その種類の豊富さこそが、ランの奥深さの源泉と言えるかもしれません。ランの世界の入り口は胡蝶蘭やシンビジウム、デンドロビウム、カトレアといった有名品種ですが、そこから好み次第でいろんな品種を掘り下げていけますから。

大場:ランのイベントを開くと、いまだに見たことのない品種に出会います。何10年携わっていても未知なことだらけなので、まったく飽きません。

松本:いまだに新種もたくさん発見されますしね。

河村:南極や砂漠以外ならどこにでも棲息しうる種ですから、たとえば人が立ち入れない地域にもまだまだ新種があるはずです。見つからないままに絶滅した種も相当あったと思います。

大場:危険だった地域の情勢が変わって人が入れるようになり、一気に新種が見つかる、なんてこともあり得るでしょうね。

奥田:ランの愛好家がこれだけ多いのも、そんな汲み尽くしきれない魅力があるからです。これからも、ラン愛好家の皆さんや、植物好きなお客さまに満足してもらえるようなランを積極的に紹介していきたいと思います。

編集:fridge Inc.

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